本を送っていただいてありがとう。7月に送っていただけなかったのは残念ですが、やはり心に何かあったのでしょうね。しかし、今、本が手許にあり、あとがきには僕の名前も出てくる。先週の会に出席してよかったと思います。
 ところで、君はまたしても、サインの後、本をよく乾かさずに閉じてしまったのですね。裏表紙をめくると、 少しインクが移っていました。
 いい本ですね。カバーも含めて、立派な、いい本です。これだけ著者の個性を反映した本をつくれたということに、おめでとうを言いたいと思います。
 『人人人人』は面白かった。毎月読む文芸誌にのっている小説を読むときより、ずっと楽しい時間を過ごしました。要は好きか嫌いかなのであって、僕は『人〜』が嫌いじゃない。小さなギャグで僕の気に入ったのは、「秋山さんの野郎」というセリフ。他にもいくつかの箇所で笑いました。ただ、僕だったらこれを作品集の冒頭には持ってこない。
 『カワサキタン』久々の再読。前に読んだときより面白かった。熱狂的な支持者が出て来ても不思議はないかも。
 『おやじ』はそれほど楽しくはなかった。作品の出来のことではなく、僕が読者として楽しめなかったということです。
 ”おやじ”の感想を書き終わってから夕食に外へ出て、カルビ、タン塩、レバ刺しなどを食い、ビールも中ジョッキx2とビン1本を飲んで帰宅、風呂に入って『上空』を途中まで読み、それから無躾ながら突然お電話させていただきました。なんだかずいぶん長電話になってしまって、申し訳なく思っています。ではこれから『上空』の続きを。
 『上空』。順位をつけるとすると、これは上位にいく。
 『トリスタンの罠』。一番気に入った部分は草の名の羅列と、その処理の仕方(煮るもの、燃やすもの、など)を書いたところ。こういうのはいくらでも長く、細かく書いていいと思う。
 本の厚さからして、「これは一週間くらいかけて少しずつ・・」と考えていましたが、結局、一日で読み終えてしまいました。
 『トリスタン〜』はシナリオ形式で成功しましたね。文学性ということでは、これが一番評価の対象になりそうな気がします。(なりやすそう、という意味で)
 一番笑えたのはタイトル作、それと『上空』。・・・。
 しかし、変なハナシだけど、こうして読み終えてみると、一番印象の薄いのが’カワサキタン’に思えてくる。作品集中、最もまとまりもあり、何よりも新人賞受賞作であるにもかかわらず。
 他の四つの作品で新人賞はとれないかもしれないけれど、幸太くんらしさとでも言ったものがよく出ているように思う。他の四作に感じるスリルやあやうさが『カワサキタン』にはないのかな。あまりに小説(あたりまえか)すぎる(幸太文学としては)気が、今はする。でも、やっぱり受賞作ですね。だから、と言うか・・。
 なんとも汚い手紙でごめんなさい。
 少しだけ自作の話。『ウェディング・ドレス』は作品に三つの時間があり、過去、現在、もう一つの過去、が断続的にあらわれ、「わかりにくい」と言う人もいます。
 では、差しあげるわけにはいきませんが雑誌を送ります。感想をきかせて下さいね。

藤枝 和則・作家



 こんにちは。
 お手紙ありがとうございます。
 しかし、おどろきました。
 ”あらー、読者アンケートハガキって本当に作家の元に行ってるのね!?”と。
 てっきり、あれは出版社で、”今後の参考”にされるだけ、だと思ってましたから・・・。
 作家の元に行くってわかってたら、もっと、まじめに感想書いたのに!!とか思ったりして・・。(だって、何書いたか、あまり覚えてませんもの・・)

「なにか気持ち悪いぐらい心地良い。勢いがあって素直に面白い。次回作にも期待!」

 −−−と、いうわけで、足りなかった感想を補わせていただきます。
 『人人人人』と『上空』の2つからでしたら、『人人人人』が印象的です。
 巻頭作がつまらなかったら、きっと、後半、読んでませんから。
 でも、ホントは、『おやじ』が何故か気に入っています。一見、日常的とも見えて・・(?)
 いちばん、ワクワクしました。
 そして、読まなくてもよい、という、あとがき、妙におもしろかったです。
 読みながら、つい、応援したくなるような、”コナマイキさ”(・・すみません)が、心地良くて。
 余談ですが、でも、純文学誌に敬遠されるオモシロすぎる小説を国書刊行会が受け入れた・・・とすると、さしづめ国書刊行会は、純文学界の青林堂→「ガロ」ってとこでしょうかね?(余計なはなしですが)
 私は、あまり女性らしい女性でもないので、女性読者!というありがたみはあまりない・・・と思いますが、応援しております。
 がんばってください。
 面白い本だけ、を読みたい、と思っておりますので−−−−。
 今後も、挑発的な位、面白い小説を書いて、小生意気なままで、いてくださいませ。
 それでは。失礼いたします。

西 美和・会社員


 
 『人人人人』を読んで、私は始めのプロフィールで一瞬にしてあなたの”ファン”になりました。
 今までいろんな著者の本を読んできましたが、この様なプロフィールは初めてで、本の内容に興味を抱きました。
 中山さんとは一体どのような人なのか、考えたらキリがないのですが、このプロフィールからも分かるようにきっと変わった個性をお持ちの方なのでしょう。一度お会いしたい限りです。
 小説の内容は、実体験なのですか?それとも架空の物なのですか?とても知りたく思います。
 この本は古本屋で見つけたのですが、こんなおもしろい本を他の人にも読ませたいと思い、友人にすすめた所、かなりの好評でした。中山さんの小説はどうしても実際にあった事として読んでしまうので(そう思わせる所がすごい!!)かなりはまります。そして友人の間で広めるだけではなく、もっと多くの人、公共の場にも広めたいと思い、区の図書館(雑司が谷図書館)でとりよせ、おいてもらおうとしたら、すでに上池袋図書館に入っていて、嬉しくなりました。
 一番笑えたのは、「おれは小説家だ!!」とさけぶ所です。事実ですか!?プロフィールの最後の方の文もおもしろかったのですが、この部分もかなりおもしろいです。小説を読んでこんなに大笑いしたのは初めてです。
 これからも中山様のご活やくを心より応援しております。

’あなたのファン’・女子学生−18歳

         



 小狭いが、建物のシンプルさが展示物を引き立てており好ましい。案内や見張り(?)のお姉さんの対応も親切だった。ダニエル・ビュレンヌ展は屋外や市内でのプロジェクトもあり、楽しめた。展示案内図も見やすい。ただシリーズで見ることはないので第9展示室は物足りなかった。中山幸太の『人人人人』(国書刊行会)で水戸芸術館の存在を知ってはじめて来ました。奇妙なシンボルタワーが良いです。別に展望台にする必要はないと思いますが。

’(愛知県/フリーター/女/22/今回が初めて)’
水戸芸術館・来館者アンケート(1996年8月15日・038)より



       





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