回顧2023




 年も押し迫った時期に見たケリー・ライカート。U-NEXTに突如アップされるまでまったくその存在を知らなかった。まだ「リバー・オブ・グラス」と「オールド・ジョイ」の2作しか見ていないのだが、どちらかをベスト10に入れようと思った。人生を振り返って激しいセックスと暴力に満ち満ちた世界にまみれてきた身としては前者を選んだ。その優しいセックスと暴力の世界に癒されるからだ。後者もじつに素晴らしく大いに迷った。

 「首」はとりあえず5位にした。一番最初に不動の5位に選んだ。5位を決めてからその前後の順位を選んでいった。外国のファンにビートたけしのお笑い番組を見せると一様に口をあんぐり開け信じ難いという様子の映像を見たが、日本人の観客には北野映画にでてくるお笑いタレント、コントシーンで興ざめしてしまう不幸がある。でもそれもだんだん薄まって今作ではさらにストーリーに有機的に溶け込んでいて鼻につくことはほとんどなかった。黒人が出てきたときは一瞬危惧したが、相対的視点を提供することにこの上なく貢献していて見事だった。

 「エンパイア・オブ・ライト」を2月に見て10月に「不安は魂を食いつくす」を見たのだが、最初はその類似に気づかなかった。それからしばらくしてなんとなく似ている、いやかなりそっくりだと思った。それでこの二本をともにベストテンに入れていたのだが他も入れる必要がありどちらかを選ばなければならなかった。それでじつに断腸の思いで前者を選んだ。決め手はやはり舞台となったあの映画館だった。さらにファスビンダーからは「マリア・ブラウン」を入れないとならなかった。

「ゴジラ-1.0」は絶賛の嵐だがぼくはそうは思わない。それは絶対に死んだと思ったある登場人物が生きていたから。それは些細なことだろうか?ぼくはそうは思わない。まあ、メッセージとかそんなことはどうでもよく、ただ楽しめればいいのかもしれないが。金もかかっているし。

ピエール・エテックスから「大恋愛」を選んだ。ジャック・ロジェも選びたかったがその代わりなにを外せばいいかわからなかった。「トルテュ島の遭難者たち」はちょっとベルナー・ヘルツォークを思い出した。「アギーレ」と「フィツカラルド」を。着地点はやはり違ったが。

「オオカミの家」はみたときこれが今年のベストワンでもいいかと思った。その他の映画と比較することが無茶だ。

「バビロン」はアカデミー賞にノミネートされなかったことが見ればわかる。最高。





 






2023候補作およびベストテン発表!



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