回顧2018




 「立ち去った女」は昨日見た。それからネットで映画について調べてみた。そして笑った。まるっきり何も知らなかった。
 「セールスマン」と「立ち去った女」の順位がなぜそうなったのかはなんとなくとしか言いようがない。ただ「セールスマン」はものすごく面白いといえるが、「立ち去った女」は一般にはそう言えない。ただ言えるのはまったく高踏的な映画ではないということだ。アートフィルムの衣を着た大衆映画なのだ。
 「立ち去った女」は縦の動き、奥行きが特徴的だ。あたかも大画面で見ることを前提に作られている。3Dか?

 「ダゲレオタイプの女」のアイデアはアイデアとは言えない。少なくともシャマラン以降は。これは映画を進めるうえでの単なる枠組みにすぎない。観客はけっしてそれにしぶしぶ付き合っているわけではない。それでもこの映画を先に見ていたとしたらぼくの小説は書かれなかったかもしれない。ずっと以前にも黒沢映画とのシンクロニシティを経験している。そのとき通底していたのはカフカだった。

 「カメラを止めるな」は今年一番の話題作だろう。この映画をほめなければいけないというその同調圧力に屈することなく選考に臨んだ。仮にこの映画をまだ話題にならない封切初日に見ていたとしても評価は変わらないだろう。

 前に吃音のイギリス国王がよりによって演説の達人のヒトラーと戦う映画があったが、チャーチルという演説の達人がちゃんといたんじゃん。
 戦争というものの恐ろしさを感じた。他の多くの人はたぶん感じないだろう。この映画を見ても。

 「アリー/スター誕生」はハングオーバーの番外編だった。レディ・ガガはいい人だということを知っていたが、その素のよさが生かされている。とにかく悪人が一人も出てこないので正月映画としてもおススメ。

 入江悠は北関東の平野を好んで描く。世界で一番さびしい風景を舞台にする。特に冬の寂しさは筆舌に尽くしがたい。一人ではとても暮らせない土地だが、ぼくはそこでひと冬を過ごしたことがある。突き抜けた寂しさというのではなく、その寂しさは決して極まることはなくただ果てしがないのだ。しかし映画は面白いし好きな土地だ。第2の故郷と呼んでも差し支えない。「ビジランテ」に出てくる東京駅風の駅舎は深谷駅のそれだ。ちょうど今の時期、暖房効率がどこよりも高い車で走るにはうってつけの土地だ。東松山のからし味噌をつけて食べる大粒のカシラ串でもかじりながら最高に楽しいドライブが約束できる。とくに夕日の美しさは筆舌に尽くしがたい。
 





 






2018候補作およびベストテン発表!



BACK