回顧2013




 映画はあまり見れなかった。1位を何にするか、あっちとそっちとこっちのどれにするか悩んでいたところ、年末にダントツの1本が現れホッとした。『永遠の0』はたぶん原作はまったくぼくの読書の範疇にはないような気がするが、映画は凄かった。正直、見る前は危惧していた。予告を見る限り、人間の演出に不安があった。『ALWAYS』のような映画ならいいが『宇宙戦艦ヤマト』のようなリアリズムを求められる場合、どうかな、と。だがVFXだけはどうしても見てみたかった。見ている間、まるでゲームの課題を一つ一つクリアしていくような、いやらしい見方をしている自分がいた。映画は一つ一つこちらの設けたハードルを超えていった。この主人公がなぜこうまで軍規を無視してまで己の信念を貫いているのか一切理由は語られない(妻子のために生きて帰る、というのはその理由ではない)。そのあからさまな態度・行為からしてSFなのだと割り切れば(もしくは語られない何かがあると想像を巡らせれば)あとのエピソード・セリフはすべて的確だった。合コンのシーンは一つの大きい罠になりがちだが、ここも作為的にならず、ステロタイプに陥ることなく、自然に共感を生んで、次の舞台に移るシークエンスが見事だった。存分に堪能したあとであのラストはなかった。正直、ガタガタ震える身体を抑えることに必死だった。ここでもし抑え切れなかったら号泣と嗚咽でみっともない態を晒していたことだろう。近年稀に見る紛れもない映画的な感動だった。凄いのはこのラストが浮くことなくしっくり映画の壮絶な幕切れとしてはまっていたことだ。このラストを撮りたいがために話を進めてきたわけではないということだった。

 小説はパムクを集中的に読んでいた。でも一番読んだのは自分の小説だった。来年は新作を発表します。




 






2013候補作およびベストテン発表!



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